用の美
「用の美」という言葉があります。
民藝運動の父と呼ばれる柳宗悦を語るうえで
清貧の美と並んで多用される美意識、
本来は生活日用品のムダのない美しさなどを現す言葉です。
写真はロッキング・プライヤー。
別名バイスプライヤー。
名前の通り、ガッチリ咥えて掴む(挟む)道具です。
この道具には大きな特徴があって単純に掴むだけでなく、
掴んだまま握りを放してもロックを保持する
挟み固定が出来る点です。
挟み幅を調整するのが右上のレバー端についたスクリュー
反対に下側レバーには握りやすくするために
手になじんだカーブが付いています。
また、レバーを繋ぐヒンジ部分には
ロック・解除のきっかけを作りやすくする出っ張りが付いています。
挟んで離さない。
この1点に機能を絞ったムダの無いカタチ。
使いやすく、そして見ていても飽きない工具で
触るたびに良く出来ているな、と常々感心しています。
これも正しく用の美と呼べるのではと。
以前にも紹介した
カンパニョーロなどの自転車パーツたち。
これも単純に走るためだけに作られた部品です。
なるべく軽く、なるべく丈夫に。そして美しく。
美しさが秘められているからこそ
使って飽きない、見ていて満足するのだと思います。
取るに足らない部品や工具。
芸術品でもない小さなカタチにこそ美が宿る。
バウハウスの巨匠、ミース・ファンデルローエが唱えた
神は細部に宿る。という言葉とも
何か共通する部分がありそうですね。