50年ぶりのスポットライト

雪が消え貴重な日差しの朝
通りがかったご近所N邸の
解体工事がヤマ場を迎えていました。

このところ響いてくる重機のエンジン音と
材木が砕けるバリバリという音。
また今年も地域の新陳代謝が繰り返されるようです。

10年ほど前にご主人が他界、ほどなく家族も移り住み
半ば空き家となって放置されてきた家。
実はこういう住宅が増えているそうで
地域自治体も把握が難しく困った問題となっています。
何よりも漏電や落雷による火災が怖いですが
他にも劣化による倒壊、植栽放棄による環境問題
等などいろいろと続きます。
そんなN邸。
ふと見上げた先に勉強机が目に留まりました。

おそらくは50年以上前に
入学祝いで運び込まれた品物でしょう。
きっとその日は家族みんなで眺め
引き出しや天板、棚を触ってみては
「良かったね」「しっかり勉強しないとね」
などと口々に喜びあっていただろう情景が浮かびます。

最初は役目を果たしていた机も
だんだんと使われなくなり、物置きの一部となって
ひっそりと部屋の片隅で過ごしてきたのでしょう。
それが解体という最期の瞬間
再びスポットライトを浴びたように
目の前に現れた格好です。

偶然にも目にした風景
使っていた持ち主が見届けていてくれたら
もっと良かったなと思います。

いや、きっと見ただろうと信じてます。
わざわざ一晩この机だけ
ポツンと残った状態をキープしていたんだから。
粋な解体屋さんだなと感心した朝でした。