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中之口川と鮭の遡上③

偶然見かけた鮭の遡上風景
貴重な瞬間から考える鮭の習性とは。

なぜ障害の多い中之口川を通るのか、まとめです。

 

鮭はそもそも淡水魚です。
それが海洋に出て成長し、淡水の環境で命を繋ぐ。

淡水域のメリットは、外敵が少なく気象によっても左右されず
常に一定環境で過ごせること
対してデメリットは、エサの絶対量が少ない です。
逆に海水域のメリットは一年を通してエサが豊富
しかし外敵が多く、潮の流れや天候によって変化しやすい ですね。
つまり、たらふく食べて大きくなるために海に出よう!
そういう風に鮭はプログラムされているんだろうと思います。

②で記したように、鮭は適水温が3~15℃となかなかの暑がり。
だからか主に冷たい水を求めて住む場所を変える習性があります。
これが海に出る第2の要因。

そして淡水→海水→淡水 と行き来できる能力。
これは塩分浸透圧を調整できる、鮭の大きな特徴だそうです。
ただし調節は時間を掛けて慣らさないと
細胞レベルで体がうまく動いてくれないのが普通だそうです。

これは私の仮説ですが
遡上する鮭は、浸透圧馴致を我慢しているのではないか?
ムリして淡水に登っているのでは?と思います。
人間が力を入れる際に息を止めるように。

我先にと産卵を急ぎ、バトンを繋いで息絶える凄まじさ
人間なら呼吸を忘れるほど感動と絶景の幸福に包まれる瞬間
みたいな感じなのかも知れません。

ここでもう一度マップを見ます。

大きく迂回して蛇行する信濃川本流。
対して中之口川は西にバイパスルートを形成しています。
つまり単純に距離が短い。

そして中之口川は堰の多い川です。

上の写真でいうと、赤い太線部分がその堰のある場所。
わずか30キロの間に5カ所、分水を除けば堰があまりない信濃川
中・下流域で突出した多さです。

堰は多くが人間の都合、つまり治水・利水の道具です。
水害を防いだり、灌漑・水道・工業用水を得たり発電に使ったりと様々。

一方で鮭の側から見ると、障害物以外の何物でもないハズ
これは想像すれば判ると思います。

ところが逆に考えると、堰の多さは水量の安定に繋がっています。
特に春先は灌漑用(主に田植え)として、
常に充分な水量で満たされている事は周知の事実で
鮭の稚魚からすれば、安心安全な絶好のルートに映ったに違いありません。

つまり、稚魚の中で降海しやすさの都合により中之口川を選ぶ割合が
一定数存在したということなのでしょう、意外ですが。

だから母川回帰でも同じルートを遡る。
かつて嗅いだ懐かしい匂い、同じ水中風景
これが中之口川に遡上する大きな理由だと思います。
あくまで私見ですが。。。

先日見たのは③の堰の上でしたので
鮭にとっては多くの堰は
案外ちょっとしたアトラクションなのかも知れません。

それでも息を我慢して登っているなら
障害物の堰は無い方が良いですね。
魚道なんてのも人間側の言い訳。
鮭はあんなところ通って下ってないもの。

まぁいろいろと取り留めない結論に達しましたが
鮭の一生を学び想像する
滅多に出来ない良い経験でした。

いや、実際は中之口川で産卵してるよ。
そんな意外な事実、もしご存知の方がいらっしゃったら
教えていただけると有難いです。

 

2022.1121追記)

河口から遡ってきた分岐点
右へ進むと中之口川、左が信濃川

ここで微妙な匂いの違いや景色の記憶を
鮭たちが呼び覚ましているのかも、と
考えると感慨深い景色です。